アロエといえば、ぷっくりとした多肉質の葉をもち、ベランダでもよく育つ植物としておなじみ。
「多肉植物の仲間」「ハオルチアに似ている」「ユリ科の薬草」…といったイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし、現代の植物分類学ではアロエは“ユリ科”でも“ハオルチアの仲間”でもありません。
この記事では、最新の分類体系に基づいて「アロエとは何か?」を正確に、わかりやすく解説します。
ユリ科だったのは昔の話|APG分類体系とは?

▷ かつては「ユリ科」だったアロエ

かつてアロエは、花の形や葉の構造がユリに似ていたことから「ユリ科(Liliaceae)」に分類されていました。
しかし、ユリ科はあまりにも多くの異質な植物を含む“ごちゃまぜ”な分類群であることが次第に問題視されるようになりました。
▷ 最新分類は「APG体系」で再編成

1998年以降、被子植物分類体系(APG分類)が導入され、DNA解析に基づく分類が主流となりました。
これによりアロエは「ツルボラン科(Asphodelaceae)」の一員と再定義され、現在もこの分類が採用されています。
アロエは「ツルボラン科アロエ属」

分類学的な現在の正確な位置づけは以下の通り
階級 | 名称 |
---|---|
界 | 植物界 Plantae |
門 | 被子植物門 Angiosperms |
綱 | 単子葉類 Monocots |
目 | キジカクシ目 Asparagales |
科 | ツルボラン科 Asphodelaceae |
属 | アロエ属 Aloe |
このツルボラン科には、アロエのほかにガステリア属(Gasteria)やハオルチア属(Haworthia、現在はHaworthiopsisやTulistaなどに細分化)も含まれており、これらは“近縁の属”になります。
「アロエ=多肉植物」は分類ではない

アロエは葉に水をためる“多肉質植物”ですが、「多肉植物」という言葉は分類学上の用語ではありません。
“乾燥に適応した形態を持つ植物”というライフスタイル的な分類(生態型)に過ぎず、アロエの近縁関係を示すものではないのです。
▶ たとえば…
- アロエ(アフリカ原産、ツルボラン科)
- エケベリア(メキシコ原産、ベンケイソウ科)
- リトープス(ナミビア原産、ハマミズナ科)
これらはどれも「多肉植物」ですが、分類的にはまったく別グループです。
まとめ|見た目で判断しない、最新の“植物のものさし”を
アロエはユリ科でもなく、ただの多肉でもない。
分類体系は時代とともに進化しており、私たちの知識もアップデートが求められます。
植物の魅力をもっと深く楽しむには、「どこに生えているか」「どんな姿か」だけでなく、「どんな仲間とどこで繋がっているか」という視点も大切です。
よくある質問(FAQ)

Q. ユリとアロエって似ているように見えるけど、近いの?
→ 見た目は似ていても、APG分類では異なるグループです。
アロエはツルボラン科、ユリはユリ科(またはヒガンバナ科)に分類されます。
Q. アロエとハオルチアの違いは?
→ どちらもツルボラン科ですが、属が異なります。
アロエは葉が硬質で棘があり、花も立ち上がる傾向。
ハオルチア(現分類ではHaworthiopsisなど)は柔らかく、日陰適応型の種も多いです。
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